ヨーロッパ重工業地帯地図


木内信蔵他 (1975)『世界地理・ヨーロッパ』朝倉書店 等より 大谷作成。

 多くの採炭地域が国境沿いや国境をまたいで存在しているのは、大戦前夜、国民国家体制のもと富国強兵を目指す欧州各国の、石炭などの資源を巡る紛争や政治的駆け引きの結果である(シレジア、ルール、ロレーヌなど)。
 そもそもEUの前身であるECSCの命題は、ザール地域をはじめドイツ・フランス両大国間で常に紛争の火種であった石炭と鉄鋼を、欧州の共有財産と位置づけることだった。重工業地域という欧州共通の「財産」の存在が、欧州統合を後押ししたといえる。
 現在これらの地域で多くの問題(環境、失業、人口流出など)が越境的に起こっている。欧州共通の財産は、いまや欧州共通のお荷物となった。
 西欧ではこれらの「問題を共有している地域で、越境的に問題を協力して解決する」ことにつながるアクションをいくつか見る事が出来る(ルール地方-Ruhrgebiet、ザーロルクス-SaarLorLux など)。東欧ではまだまだ動きは鈍いものの、主に環境面でINTERREGプログラムを活用したプロジェクトが動き出している(EuroRegion Neißeなど)。